【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

経済に関心のある人にとって、完全失業者や就業者といった労働力の概念はなじみのあるものだろう。実際、完全失業率の数字は大きく報道される。しかし、それほど知られていないが、近年増大している労働力状態の区分がある。それは、就業は継続しているが、少なくとも調査期間の月末1週間は働いていない労働者だ。まとまった期間、さまざまな理由で仕事を休んでいる人のことで、休業者と呼ばれている。

この休業者が、近年増加傾向にある。2017年平均の休業者数は151万人で、完全失業者数の190万人にほぼ匹敵する。しかも完全失業者数が減少傾向をたどっているのに対して、休業者数は07年と比べて39万人も増大している。就業者数に占める割合も、1.7%から2.3%へ顕著に上昇している。

実は、リーマンショック後の09年に休業者数は前年比で15万人も増えた。これは、企業が雇用調整助成金等の制度を用いて雇用者の一時帰休を進めたからだ。しかし、不況から回復した後も休業者数は趨勢的に増えている。

その理由は明確だ。最大の要因は育児休業を取得する女性が増えたこと。加えて、育児休業を取得した人の休業期間が全般的に伸びた。高齢者の増加が休業者数を増やした点も無視できない。とりわけ65歳を超える労働者は健康リスクにさらされやすい。

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