しが・としゆき●1953年生まれ。76年日産自動車入社。常務執行役員、最高執行責任者を経て、2013年に副会長。15年に代表権を返上し、同年から現職。17年に日産取締役。(撮影:尾形文繁)

ベンチャー投資を率先し、民間投資の呼び水になる

われわれが目指すのは、日本の産業競争力の強化であり、次世代を担う新しい産業を創出することだ。産業革新機構の投資案件として、液晶パネルのジャパンディスプレイ(JDI)や、有機ELのJOLEDなど、比較的難しいものばかりに注目が集まる。だが、投資決定件数は129件もある。さらに言えば、全体の8割がベンチャーへの投資であり、農業の省人化やiPS細胞を用いた輸血技術の開発など、革新的な事業を展開する企業がいくつもある。そこにもっと着目してほしい。

日本では、新たな技術やサービスを創出する大学発ベンチャーなどへの資金供給が十分ではなく、事業化の過程で断念するケースが多い。産業の新陳代謝が進まず、「ゾンビ企業」が生き残ってしまう。産業革新機構がベンチャーへのリスク投資を率先して行うことで、民間投資の呼び水になりたい。

──国民の税金で運営している以上、社会的意義だけではなく、収益性も重視する必要があります。

組織設立から約9年が経過し、事業再編や海外、ベンチャーと、バランスの取れたポートフォリオになってきた。その結果、出資した時点と比べて、現在の投資先の価値は2.3倍となり、その総額は2兆円を超える。これまで収益的に苦戦してきたベンチャー投資で成果が出ていることも大きい。