放任主義で培った自立心

「うちの母は“プロの放任主義者”だったんだと思いますね。恥ずかしがり屋なので表に出ませんが、今考えれば、母の風呂敷の中で育ったことがわかる。その風呂敷がとても大きかったんだと思う」

充は遠くを見ながらそう言った。東大入学後に訪れたバングラデシュで目にした貧困に衝撃を受け、貧困問題の解決のために栄養素の知識を身に付けようと決意、その後ミドリムシと出合う──。それがよく語られる充の起業へのストーリーだ。だが、そんな充の人間性が養われたのは、子ども時代の環境にさかのぼる。

充は1980年、業務用コンピュータを扱うエンジニアの父、専業主婦の母の下に、広島県で生まれた。その後、川崎市で暮らし、2歳のときに弟・渉が生まれたのを機に、東京・多摩ニュータウンに引っ越した。

「かつての典型的なニューファミリー族。所得も行動様式も同じような家族が街を彩っていた」(充)