過剰なまでに男らしさを誇示する動きが広がっている。トランプ米大統領が売りにしているのは、女性をわしづかみにして、ゴリラのように胸をたたいてほえまくる野蛮人のイメージだ。若い男性にはカナダの心理学者、ジョーダン・ピーターソン教授の信奉者が多いが、教授はやわなリベラルに毅然と立ち向かい、男性優位を取り戻せと主張している。

こうした男くささを美化する風潮は過去にも見られたが、政治的に相当な害をもたらしている。戦間期のイタリアで、マッチョなカリスマ性を利用したのがムッソリーニだ。乗馬用ブーツを履き、革ベルトに力強く両手を置いた同氏は、しかめっ面でふんぞり返り国民を支配した。あたかも従順な愛人を相手にするかのように。欧州のファシストはムッソリーニをまねて、芝居がかった男っぽさを見せつけることで国民を鼓舞しようとした。

ファシストはユダヤ人を迫害したが、そこで利用されたのがユダヤ人に対する偏見だ。弱々しく、親切でガリ勉というのは男っぽさとは正反対のイメージだ。校庭で上下関係を決める力学が広く世の中にも適用されることで、ユダヤ人は自然といじめの対象になった。