勘定奉行と聞くと、会計ソフトのCMを思い出す読者が多いのではないだろうか。あるいは「お勘定」といえば代金の支払いのこと、と思われるかもしれない。やはり、金銭の出納や管理をイメージするのが普通であろう。しかし、それは江戸時代の勘定奉行・勘定所の一面でしかない。

勘定奉行とは江戸幕府の勘定所という役所の長官で、定員は4人、おおむね3~5人が在職していた。勘定所の職制・機構は、18世紀後半にはおおよそ下図のようであり、職員数が幕末には300人を超える大きな役所だった。

勘定奉行は、基幹職員ともいうべき勘定所役人を配下に持つだけではなく、全国の幕府領を支配する郡代(ぐんだい)・代官、幕臣への俸禄(ほうろく)米支給を処理する書替(かきかえ)奉行、米蔵を管理する蔵奉行、金蔵を管轄する金奉行、漆の収納を扱う油漆(うるし)奉行、幕府の山林を支配する御林奉行、河川の川船を扱う川船奉行、大河川の治水工事の施工や監督をする普請役(ふしんやく)なども支配していた。さらには、勘定奉行は、多数の勘定所内部の職員や関連部局の職員らを指揮して、諸業務を遂行していた。

勘定奉行・勘定所が扱う職務は多面にわたる。(1)江戸幕府財政の運営、(2)幕府領を支配し、財政収入の中心である年貢を収納すること、(3)各種財政経済政策の立案・実施、(4)道中奉行を兼任し、五街道など主要街道を管轄して陸上交通を維持すること、(5)全国の大河川の治水や山林の管理、(6)幕府領民の訴訟、幕府領民と藩領民など支配違いの住民間の訴訟を裁く評定所(ひょうじょうしょ)の主要な機能を引き受け、幕府司法の多くを担うこと、などにまとめられる。