「伊藤さんは、勝つんですよね?」

「はい」

「相手がどんな人であっても、勝つんですか?」

「世の中、いろんな人がいますから。でもまあ、刃物があれば大丈夫でしょう」

「どんな人でもですか?」

「そうです」

「本当ですか? すごいですね。ものすごいですね」

これは、私が特殊部隊を辞めて、ミンダナオ島を拠点にしていた頃、日本でベンチャー企業に向け経営戦略に関するワークショップを開いた際の懇親会での会話だ。

このとき、隣に座っていた方が、企画会議などで同僚と意見が分かれて議論になると、時折それがヒートアップしすぎてケンカになりかけるのだという。それで私に、勝ち負けの質問をしてきたのだった。

私の答えに、その人が何度も「すごい、すごい」と言うことに、強い違和感を覚えた。