【今週の眼】柳川範之 東京大学大学院教授
やながわ・のりゆき●1963年生まれ。慶応義塾大学通信教育課程卒業。93年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。東京大学助教授などを経て2011年から現職。主著に『法と企業行動の経済分析』『独学という道もある』など。(撮影:今井康一)

企業が高い収益性を実現させるのは、マクロ経済的にも、そこで働いている従業員にとっても望ましいことはいうまでもない。しかし、大きな失敗がない代わりに大きな成長もなく、低位安定で活動する企業ばかりでは、残念ながら経済全体のパフォーマンスは上がらない。

失敗や低迷の可能性がある程度高まっても大きなチャレンジをする企業が増えてこそ、経済全体の収益性は高まり、結果として経済が低迷するリスクも小さくなる。

しかし、残念ながら多くの大企業は、失敗の可能性を低く抑えることに意思決定の重点が置かれがちで、そのために社内全体の合意を得ながら進むのが通常だ。

もちろん、このような意思決定メカニズムのほうが競争優位性を発揮できるような経済環境も存在する。しかし、残念ながら現在はそのような状況ではない。

その理由は大きく分けて三つある。一つ目は、大きな技術革新が起きていて、どうすれば成功し、高収益性を実現できるのか、明確な方向性が見えにくい時代になっている点。二つ目は、現状維持をすることのマイナスが大きくなっている点。そして三つ目は、変化のスピードが圧倒的に速く、成功事例の後追いをしていたのでは間に合わない時代になっているという点だ。