──独占禁止法違反が後を絶ちません。

「和をもって尊しとなす」という伝統があるためか、日本企業のコンプライアンス意識は低い。野球でルール違反をすると制裁を科されるように、ルール違反自体が問題だ。そこによい、悪いという判断は存在しない。日本では独禁法違反に対する罰則も軽く、行政罰で済んでしまう。刑事告発をしても実刑にまで至る例は少なく、大抵が執行猶予付きだ。

公正取引委員会 委員長 杉本和行
すぎもと・かずゆき●1950年兵庫県生まれ。東大法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。財務事務次官、みずほ総合研究所理事長などを経て2013年から現職。(撮影:尾形文繁)

米国では話し合いの疑義だけでアウト

──「よい談合」は存在せず、と。

談合はやむをえないんだ、それを違反だと断じる公正取引委員会は血も涙もない、との声があるが、国際標準からあまりにも懸け離れた議論だ。

競争によって消費者の利益を確保することは大原則。海外では、談合は市場メカニズムを歪める行為であるため重罪とされており、罰則も厳しい。米国なら話し合いをしているようだと疑義を持たれただけでアウトだ。配慮せざるをえない理由があるなら、発注者に掛け合えばよく、受注者同士で話し合う必要性はない。

われわれが公表しているガイドラインでは、「受注を取りにいく」「取りにいかない」といった情報や、過去の受注実績を交換しただけで違反のおそれがあると明記している。企業に対する研修や意見交換も行っており、独禁法の周知徹底を図っている。それでも起こった違反事例に対しては、厳正に摘発し、隠していても見つかるのだと知らしめる必要がある。

──長崎県の十八銀行と親和銀行の統合に待ったをかけています。

統合しなければ経営が成り立たない、それを妨げる公取委はひどいといわれるが、われわれは統合による経営体質の強化は否定しない。むしろ競争政策の理念に照らせば望ましいことだ。

問題は、その方法だ。統合の可否は市場におけるシェアで判断するのが国際標準。そこには経済学的な手法を用いる。具体的には、ある商品に対する独占企業を想定し、その企業が5~10%の値上げをした場合に、消費者の乗り換えが生じるかどうかで判断する。