米スタンフォード大学ビジネススクールのジェフリー・フェファー教授によると、有害な職場環境を原因として亡くなる米国人は、推計で年間約12万人に上るという。その研究成果をまとめた著書『Dying for a Paycheck: How Modern Management Harms Employee Health and Company Performance─and What We Can Do About It』(「給料のために命を落とす──現代の経営が社員の健康と企業の業績をいかに損ねているか、そして、われわれには何ができるか」)が3月に米国で刊行され、話題になっている。組織行動学の権威でもあるフェファー教授に話を聞いた。

Jeffrey Pfeffer●スタンフォード大学経営大学院教授。専門は組織行動学。世界で最も影響力のある経営思想家のランキング「Thinkers50」の常連で、2015年は第17位。

──有害な職場環境が原因で命を落とす米国人は、年平均で約12万人に達するそうですね。

控えめに見積もっても、それくらいになると見ている。推計モデルに織り込んだ職場環境のうち最も有害と思われるものは、雇用主による医療保険の提供がないことだ。それが原因で亡くなる人は年間5万人と推定される。解雇される人が多いなど、雇用の保障が低い職場環境も有害だ。

重要な点は、労働者が病み命を落とすような職場環境は、雇用主によって生み出されているということだ。企業はそのことに気づかなければならない。

職場環境が有害な企業は、収益にも影響が出る。たとえば、長時間労働では従業員のミスが起きやすくなり、生産性も低下する。また、有害な職場環境は社会全体の医療コストも増やす。病気になる人が増え、医療費の公的負担が膨らむからだ。

──有害な職場環境だと、なぜ命を落とすのですか。

たとえば医療保険の提供がない職場では、労働者が病気になっても治療を受けない場合が多い。医療保険が提供されていても、診療費や薬代の自己負担が重いため、医者にかからない人もいる。その結果、体や心を病んでも放置され、最悪の場合は命を落とすことになってしまう。