【今週の眼】苅谷剛彦 英オックスフォード大学教授
かりや・たけひこ●1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

日本では4月になると、新入生は新しい学校や大学へ、新入社員は職場へ一斉に参入する。こうした年度の切り替えが一斉に行われることのない英国で暮らしていると、年度はじめが新しいさまざまな出来事の一斉スタートとなる日本の現象に目を見張ってしまう。

一斉に始まるだけではない。新入生や新入社員の場合、そのほとんどが同じ年齢の者で構成される。大学の新入生のほとんどは高校を卒業したばかりの若者であり、新入社員も3月に学校や大学を卒業したての若者である。しかも入試や採用の過程で選抜が行われ、それをかいくぐった若者たちだ。能力やその他の特徴の面でも同質化した集団が新入生や新入社員となる。そのため同期や年次意識も醸成されやすい。

一斉と同質性の組み合わせは確かに集団管理にとって効率がよい。大学では新入生に一斉にガイダンスを行い、職場では新入社員に一斉に研修が行われる。集団と時間を効率的に管理するうえで、同質性と結び付いた一斉スタートは日本社会に溶け込んでいる。