【今週の眼】早川英男 富士通総研エグゼクティブ・フェロー
はやかわ・ひでお●1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2013年4月から現職。著書に『金融政策の「誤解」』。(撮影:梅谷秀司)

世界的な景気好調の下、一時期猛威を振るった長期停滞論はやや影を潜めたが、デジタル技術によるサービス革新が急速に進んでいる割に成長率が高まっていない事実に変わりはない。しかも、コンピュータ化の進展の割に成長が高まらなかったという20世紀末の生産性パラドクスと違って、今回は単なるタイムラグの問題ではない可能性がある。

問題の所在は単純だ。私たちは今、無料ないし著しい低コストでネットから情報を得たり、スマートフォンのアプリを使ったりして、生活の満足度を大いに高めている。しかし、GDPには対価を支払った分だけが計上されるため、デジタル革新は統計上、経済成長にほとんど寄与しないのだ。それどころか新サービスが既存の財・サービスを代替すれば、GDPが減ってしまう可能性すらある(たとえばウィキペディアの普及で紙の百科事典の需要は大幅に減ったに違いない)。