きうち・たかひで●1987年から野村総合研究所所属。日本経済の分析、ドイツ、米国で欧米の経済分析を担当。2004年野村証券に転籍、07年経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年7月から17年7月まで日本銀行政策委員会審議委員、この間独自の視点で提案を行う。17年7月から現職。(撮影:尾形文繁)

2月に突如起こった世界規模での株価急落の震源は、1月の雇用統計によって米国で生じた賃金インフレ予想と金融引き締め加速懸念だとされた。しかし2月の雇用統計で賃金上昇率の落ち着きが確認された後も、市場は安定を取り戻していない。それは、市場の動揺をもたらしたのが目先の賃金インフレ懸念ではなく、より根深い、トランプ政権の経済政策に対する強い不信感だったためではないか。

トランプ政権は昨年末に今後10年間で1.5兆ドルという過去最大規模の減税策を決定した。さらに今年に入ってからは、巨額のインフラ投資計画を示した。

米国経済が良好で需給が徐々に逼迫する今のタイミングで、財政拡張策を重ねていけば、供給制約から経済活動にはむしろ悪影響が及び、やや長い目で見たインフレリスクを高める。また、財政赤字の拡大から金利上昇が促される。