ボーイング737MAX。月産50機超でも、供給が追いつかない (c)BOEING

東レが柱の炭素繊維複合材料事業で大型買収に動いた。蘭テンカーテ・アドバンスト・コンポジット社(TCAC)の全株式を2018年後半に取得し、傘下に収める。負債の肩代わりを含む総費用は1230億円で、東レとしては過去最大の買収案件だ。

TCACは樹脂に精通した複合材料メーカー。東レなどから調達した炭素繊維に樹脂を混ぜて複合材料(炭素繊維強化プラスチック=CFRP)にし、部品メーカーなどへ納めている。18年の売上高見通しは2.1億ユーロ(約270億円)と、規模はまだ小さい。

東レは炭素繊維の世界最大手。自社繊維を使った複合材料も自社で手掛け、16年度の事業売上高は1616億円に上る。米ボーイングの中大型旅客機の主翼・胴体用CFRPは、東レが一手に担う。

その東レがなぜ巨費を投じ、欧州の小さな会社を買おうというのか。背景にあるのは、市場の急速な変化に対する強い危機感だ。

先端軽量素材のCFRPは、これまで熱で硬化する「熱硬化性」の樹脂を用いるのが常識だった。部品メーカーはこれを専用の窯で焼き固めて部品に成形する。

新タイプで出遅れ

一方、最近注目されているのが、「熱可塑性」樹脂を用いた新タイプのCFRPだ。同樹脂は融点まで加熱すると軟化し、冷めると硬化する。加熱して軟らかくすればプレス加工が可能。成形に要する時間が大幅に短縮できるため、今後の採用拡大が確実視されている。

その最前線が旅客機分野だ。LCC(格安航空会社)の台頭などで、200席以下の単通路機の需要が急増。ボーイング「737MAX」と欧エアバス「A320」の受注残は、計1万機以上にも及ぶ。単通路機の主翼・胴体はアルミ合金製だが、内装材や構造部材にはCFRPも使われている。需要拡大で月産機数が増えるにつれ、大量生産しやすい熱可塑性が有利になる。

これまで東レは自ら市場を切り開き、高いシェアを持つ熱硬化のCFRPに研究開発を集中させてきた。そのため、熱可塑の技術開発で出遅れた。現時点では親密なボーイングからもまだ材料認定を受けていない。他方で帝人などライバル企業は、すでに旅客機部品用に熱可塑CFRPを供給。将来的にCFRPの本格採用が期待される自動車用途でも必須の技術だ。

そうした中で東レが是が非でも欲しかったのが、TCACだった。同社は早くから航空機用途で熱可塑性CFRPを研究。すでにエアバス最新鋭機のつなぎ留め部品に使われているほか、新規採用に向けたプロジェクトも進んでいるという。

問題は、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)の20倍近い買収金額の高さ。TCACは投資会社の傘下にあり、今回は複数社による入札が行われ、金額がつり上がった。

複合材料事業本部長を務める須賀康雄・常務取締役は、「まずは航空機、将来的には自動車用途でも大きなシナジー効果が出る。買収費用はあっという間に取り戻せる」といたって強気だ。もくろみどおり、買収は吉と出るか。

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