“原子力発電所の父”と呼ばれる人物がいる。豊田正敏氏(94)だ。1955年、東京電力(現・東京電力ホールディングス)に新設された原子力発電課の初代主任となって以来、日本の原子力の導入に深くかかわってきた。福島第一・第二原子力発電所、柏崎刈羽原発の建設で中心的な役割を担った後、東電副社長や日本原燃サービス(現・日本原燃)の社長を歴任。福島第一原発の事故が起こる3年前の2008年には『原子力発電の歴史と展望』を著し、原子力の将来に警鐘を鳴らしていた。その豊田氏が、本誌の取材に応じた。

元東京電力副社長 豊田正敏

「原子力委員会がだらしない。司令塔の役割を果たしていない」

本誌記者を自宅で出迎えた豊田氏は開口一番、こんな苦言を呈した。「原子力発電を続けないと日本の経済が成り立たない。そのことをはっきり言う人がいない。余計なことを言って波風を立てたくないのだろう」。

豊田氏は、再生可能エネルギーだけで電力需要を賄うことはできず、原子力は必要不可欠のエネルギーだとする。しかし、「現状のままでは原子力の将来は危うい」と危機感をあらわにする。

「(原子力委員会と並ぶ原子力の行政組織である)原子力規制委員会は、事故防止の対策など、それなりの仕事をしているが、国民にわかりやすく説明する努力が足りない。だから、国民の大多数が『原子力は危険だ』『やめるべきだ』という感じになっている」

事故を起こした東電の前途についても、「柏崎刈羽を動かせれば2兆〜3兆円のおカネを生み出せる。そうなれば経営も成り立つのだが、それができないので東電は事実上国営にされたままになっている」。

行き詰まる核燃サイクル プルサーマルも問題多い