サウジアラビアのムハンマド皇太子が外交、内政で新たな政策を次々と繰り出している。その動向は中東情勢に大きな影響を与える。昨年までサウジアラビア大使を務め、現在は退官した奥田紀宏氏に聞いた。 

おくだ・のりひろ●1953年生まれ。東大法卒。外務省でアフガニスタン大使、中東アフリカ局長、エジプト、カナダの大使を歴任。2015~17年サウジ大使。外務省での専門はアラビア語。(撮影:梅谷秀司)

──サルマン国王の後継者であるムハンマド皇太子が改革に踏み出した理由は?

サウジアラビアを取り巻く環境が激変したことだ。米国のオバマ前政権はイランとの核合意によってイランへの経済制裁を解除したが、こうしたサウジにとっての死活問題でサウジを蚊帳の外に置いてしまった。トランプ政権は民主主義や人権よりも経済を優先するから、サウジが米国製兵器を大量に購入すれば一定の保護もするだろう。しかし安全保障や王制維持で、米国を全面的に信頼できる時代は去った。首脳会談を行うなどサウジがロシアに歴史的な急接近をしているのには、米国を牽制する狙いがある。