「アメリカでは、政府でも民間でも、およそ人の上に立つ者は、みなその地位相応に怜悧でございます。この点ばかりは、まったくもってわが国と正反対のように思います」

これは約150年前、江戸幕府末期に米国から帰国した勝海舟が、老中に向かって放った言葉である。老中といえば、将軍に直属して政務を統轄した幕府の最高職だから、勝海舟はよほど腹に据えかねるものがあったのだろう。

私の父は、現職の職業軍人だったにもかかわらず、玉音放送を聞いたときの感情をこう表現した。

「とにかく! 負けてよかった……と思った。勝ったりなんかしたら、この国は大変なことになると思っていたからな」

なぜかといえば、軍の中枢部や国の要職に就いている者が、もてはやされ、みんながあこがれるからという理由で職業を選択しており、戦に負けないかぎり、そうした人たちを要職から追い出せないと思っていたから、とのことだった。