例年2月にドイツで開かれる国際シンポジウム「ミュンヘン安全保障会議」。1年前に行われた会合では、欧州の安全保障政策担当者が抱える懸念や不安が手に取るようにわかった。その3年前の2014年には、ロシアがクリミアを併合し、ウクライナ東部へと侵攻していた。16年には、英国が欧州連合(EU)からの離脱を国民投票で可決。米国では、NATO(北大西洋条約機構)を批判し、ロシアのプーチン大統領を公然と称賛するトランプ氏が大統領に選出されていた。

米トランプ政権はNATOとの強固な関係を維持していく意思があるのかどうか、一貫しないメッセージを発してきた。とはいえ米国は、バルト3国とポーランドに駐留するNATO部隊を強化するというオバマ前大統領の公約を着実に実行してきている。トランプ大統領がロシア政府とヤルタ会談型の新協定締結(大国による密約)を画策し東欧諸国が見捨てられることになる、との懸念はあらかた消え失せた。

一方、ロシアはシリア内戦の泥沼から撤退したがっているように見える。これまでのところロシアはシリアではうまく立ち回ってきた。だが、ウクライナでは違う。軍事侵攻は現地の反感を買い、ロシアはまれに見る痛手を被った。早晩、ウクライナ東部の紛争からも撤退を模索することになろう。実際、すでにロシアは、限定的ながらもPKO(国連平和維持活動)部隊を同紛争地域に派遣する案を提示し、国際社会の反応をうかがっている。現状維持をいつまでも続けていられないことはプーチン大統領もわかっているはずだ。