「現在、二つのバブルがある。株式市場のバブルと債券市場のバブルだ」。2月上旬の米株価急落の直前に、通信社のテレビインタビューでそう語ったのは、FRB(米国連邦準備制度理事会)元議長のグリーンスパン氏である。タイミングの適切さもさることながら、バブルの存在は株式市場にとどまらない、という指摘は重要だ。以下では足元の金融市場の過熱ぶりを七つの視点から追う。

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VIXの低さに賭けた取引が株暴落の引き金

米国発の世界同時株安が2月上旬に起きたとき、株価下落を加速させた金融商品がある。スイスの大手銀行クレディ・スイスが発行した上場投資証券(ETN)「ベロシティシェアーズ・デイリー・インバースVIX短期先物」(略称:XIV)だ。世界同時株安で、その価格は年初の高値に比べ96%も暴落し、異例の取引停止・早期償還に追い込まれた。XIVを購入していた投資家は損失拡大を防ぐため株式先物市場で売りに走り、株価下落を増幅させた。

XIVの仕組みはやや複雑だ。「インバースVIX」とあるように、株価変動指数(VIX)に逆連動する。つまり、株価のボラティリティ(変動率)が下がるほど、リターンが高くなる。VIXは、米国株価指数S&P500のオプション取引の値動きを基に算出する指数。米国株価の変動が大きくなると予想されれば数値が上がり、変動が小さくなると予想されれば数値は下がる。

米国株価は昨年、ほぼ一本調子で上昇を続けた。変動率は極めて低く、VIXは過去最低を何度も更新した。このため低い変動率が長期化するとの期待が強まり、変動率が下がるほどリターンが高くなる商品が人気を博した。

VIXの先物取引でも昨年後半、ショート(売り持ち)ポジションが過去最大規模に積み上がった。株価変動が一段と小さくなるだろうとの思惑が投機筋の間で広がったのだ。2月の株価急落を受け投機筋は急激な買い戻しを迫られ、足元ではロング(買い持ち)に転じている。

株価変動率の低さを当て込んだ投資はほかにもある。「リスク・パリティ戦略」を採るヘッジファンドだ。この戦略では、ファンドとしてのリスク量を一定に抑えるため、株価変動率(≒リスク)が低下する局面では、借り入れを増やして株式などのリスク資産を膨らませる。が、逆に株価変動が大きくなる局面では急速な資産圧縮を迫られる。リスク・パリティ・ファンドは、最大2兆ドルの資金を動かしているとみられる。株式市場のバブルがはじけたとき、変動を増幅する地雷となりかねない。