「長年、研究生活を続けてきたが、これほど残念なことはなかった」

国立感染症研究所(感染研)でインフルエンザウイルス研究センター長を務める小田切孝人氏が吐露する無念の思いは、同時にインフルエンザワクチンが抱える二つの相反する課題を暗示している。

インフルエンザの患者数が爆発的に増えている中、今季のワクチン製造をめぐり、「効き目」を優先するか、「安定供給」を取るかの究極の選択を突き付けられていたことは、あまり知られていない。

インフルエンザワクチンの製造に当たっては、各国が世界での流行を分析し、次のシーズンに流行するウイルスを予測することから始まる。最も近い型のウイルス株(ウイルスを人工的に培養したもの)を、世界保健機関(WHO)の推奨株を参考にしながら決める。日本では感染研が選び、厚生労働省が決定する。

今冬のワクチンには、2009年に新型インフルエンザウイルスとして登場したA型のH1N1pとH3N2の2種類。それにB型の山形系統とビクトリア系統の2種類、計4種類のウイルス株が使われている。