監査法人の暴走ぶりを顕著に示す直近の事例が、有償ストックオプションの新ルール導入をめぐる動きだ。

ストックオプションとは、役職員に対するインセンティブ(動機付け)の一つ。会社が役職員に対して株式の新株予約権を発行し、役職員はその権利を行使して株式を取得し、売却して利益を得る仕組みだ。

新株予約権を無償で付与するときの会計ルールはこれまでもあった。が、有償で付与するときの会計ルールは、企業会計基準委員会(ASBJ)が2017年5月に初めて原案を公表。その後の議論を経て、今年1月12日に正式に導入が決まった。

新ルールの適用対象となるのは、4月以降に付与される有償ストックオプションである。つまり4月より前に付与されたものは、新ルールを適用しなくてよい。ほかの多くの会計ルールは、過去にさかのぼって適用されるが、今回は例外的に遡及修正をしなくてよいことになった。

にもかかわらず、ある企業の経理担当者は「4月より前に付与した有償ストックオプションについても、新ルールを適用するようにと担当の監査法人から求められている」と明かす。「監査法人の求めに応じなければ決算書に適正意見をもらえなくなるのでは」という不安もあり、この企業は遡及修正を真剣に検討しているという。実際、ある大手監査法人の幹部は「遡及修正したほうが投資家の比較可能性を確保できるので、発行企業には遡及修正を求めていくつもり」と語る。