ヒトパピローマウイルス(HPV)が引き起こす子宮頸がんを予防するHPVワクチン。副反応(副作用)の報道をきっかけに日本では5年近く積極的な勧奨が中断されている。海外ではWHO(世界保健機関)の推奨もあり接種が進んでいる。日本産科婦人科学会の藤井知行理事長に現状を聞いた。

ふじい・ともゆき●1957年生まれ。東大医学部卒。2012年東大大学院医学系研究科産科婦人科学教室教授、13年同主任教授。15年日本産科婦人科学会理事長に就任。(撮影:今井康一)

──子宮頸がんという病気そのものを知らない人は多い。

HPVで生じる代表的ながんで、発症のピークは30歳代と若く、命は助かっても、治療の後遺症でQOL(生活の質)が著しく悪化することも多い。感染して数年〜10年程度で発症するが、早期発見できれば予後のよいがんといわれる。だが子宮頸部の円錐(えんすい)切除術で済んだとしても、早産や流産の可能性は高くなる。進行がんでは、子宮だけでなく卵管、卵巣、子宮を固定する靱帯(じんたい)や周囲のリンパ節など周辺部まで大きく切除するので、排尿・排便の支障や、重症リンパ浮腫、卵巣欠失症状が起きる。手術後も抗がん剤治療や放射線治療を受けることが多い。患者さんの闘病は本当に大変で、涙が出る。このことをぜひ知ってほしい。