避けられたかもしれない戦争
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Jean-Marie Guehenno●国際的非政府組織International Crisis Group代表。1949年生まれ。仏国立行政学院を卒業。仏外務省に勤務後、仏高等国防研究所長、仏会計検査院上席判事などを経て、2000〜08年に国連平和維持活動(PKO)局担当事務次長を務めた。

慎重な介入主義こそ平和維持活動の本質

評者 東洋英和女学院大学客員教授 中岡 望

第2次世界大戦が終わって70年以上経つ。しかし、依然として世界平和の実現は遠い。著者は「国家間の戦争を阻止する目的で作られた国連には、不安定な国家の根深い問題に対処する姿勢が整っていない」と、国連が直面する課題を指摘する。国連の課題は、破綻国家や失敗国家の内乱や虐殺行為にどう対処するかに移っている。その課題に取り組んでいるのが国連平和維持活動局である。著者は2000年から8年間、担当事務次長の職にあった。

本書は、著者が在職期間中に書きためた18冊のノートを元に書かれたものである。本書の最大の特徴は、「特殊な状況の詳細に基づかなければ、一般的な教訓に妥当性はない」との確信から、平和維持活動に関する「あるとあらゆる不確実な物事、欠点、誤った期待、間違った推測、不要な恐怖、実際の行動の不透明さ」を余すところなく読者に伝えているところだ。

本書は二つの部分から構成されている。平和維持活動に関する著者の考察と、グルジア、スーダン、レバノンなどで行われた平和維持活動の詳細な記述である。それぞれ非常に興味深い内容になっており、読者は関心に応じて読み分けることができる。

破綻国家とどう向かい合うかは簡単ではない。多くの破綻国家はアフリカにあり、長い歴史的な葛藤に加え、経済的、人種的、部族的、宗教的な要因が加わって内戦が起こっており、単純に善悪で判断できない。眼前で展開される非人道的な虐殺行為は理屈抜きで対処しなければならないが、「この世界はますます白黒の区別がつかなくなっている」うえに、「行為の帰結を見積もることが一段と難しくなっている」。単純な道徳主義に基づいて平和維持活動を行うことはできない。

さらに破綻国家は国民国家としての制度的な基盤に欠け、先進国は介入によって破綻国家の国家建設にも取り組まなければならず、非常に大きな負担を強いられることになる。また先進国の気まぐれや優柔不断、政治的思惑によって悪化する事態も起きている。著者は、国連平和維持活動は「非現実的な普遍主義・介入主義」と「極端な孤立主義」を排して、「慎重な介入主義」を取るべきだと主張する。

日本でも国連平和維持活動への参加を巡って議論が行われたが、便宜的な議論に終始した観があった。本書はあらためて平和維持活動の本質を考える貴重なヒントを読者に与えてくれるだろう。

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