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改憲論議の危うさ 明治維新150年

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1月26日、自民党憲法改正推進本部執行役員会が同党本部で開かれた(時事)

通常国会での与野党の論戦が始まった。今年の政局の最大テーマは憲法改正であり、憲法をめぐる与野党の対立の構図が浮かび上がった。安倍晋三首相は、憲法は国の理想を示すものであり、時代の変化に合わせて新しい憲法を作ることに強い意欲を示している。これに対し、立憲民主党の枝野幸男代表は、憲法は権力を縛るためのルールであるとして、改憲に反対の姿勢を明らかにしている。

長い歴史を持つ民主主義国の憲法を見れば、大半の条文は統治機構に関する規定であり、国家権力の運用の準拠規範である。米国やフランスの場合、国の理想は米国独立宣言やフランス人権宣言に書かれており、それらが憲法と一体化しているという事情もある。憲法に理想を書くことが誤りとはいえないが、それにしても、その場合の理想とは何かを理解しなければならない。

著書で安倍首相が述べてきた「美しい国」を憲法に書き込むべき理想だと主張するなら、私はそんな改憲は御免被りたい。思想・信条や宗教の自由を土台とする近代国家において、理想は人によってさまざまである。憲法に書き込むべき理想とは、理想は人によって異なり、それを互いに尊重するという次元にとどめるべきだ。為政者の、あるいは多数派の持つ特定の信条を国民全体が持つべき理想として憲法に書き込むことは、近代的憲法を否定する所業である。

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