日本政治とカウンター・デモクラシー
日本政治とカウンター・デモクラシー(勁草書房/290ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
いわい・ともあき●日本大学法学部教授。1950年生まれ。慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。著書に『立法過程』『「政治資金」の研究』などがある。
いわさき・まさひろ●日本大学法学部教授。1965年生まれ。東海大学大学院政治学研究科博士課程後期修了。著書に『比較政治学入門』『日本の政策課題』などがある。

理論を援用しつつ最新動向を詳細に点検

評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫

政治とはつまるところ「決定」であるのだが、問われるのは決定にいたるプロセスだ。選挙によって調達された民意を基盤として進められる議会制民主主義は、議会以外のカウンター・デモクラシーを無視できない。たとえば、本書でも論じられているが、「憲法改正」は、自民党の悲願であり、安倍晋三内閣の重要テーマではあっても、具体的な政治過程にのせられないのは、議会では調達しきれない民意が存在するからである。

本書は日本の民主主義の「質」に関して、原発、安保法制、沖縄基地問題、憲法、有権者の投票行動などをめぐるデモ、集会などの大衆行動を中心としたカウンター・デモクラシーと絡めて、10人の論者が、内外の理論を援用しつつ、その動向を詳細に点検している。

たとえば清泉女子大学准教授の山本達也氏は、政治的対立軸が、「右か左か」ではなく「上か下か」になりつつあると指摘しながら、「民主主義の不況」から「大恐慌」への移行を危ぶむ。それはソーシャルメディアの普及と重なる。たしかにかつての“東欧の春”や“中東の春”は、情報化の進展がもたらした、圧政からの解放である。しかし「情報」が圧政を代替するよい制度をつくれるわけではない。情報は「品質管理」も「製造物責任」も負わない。

しかも山本氏によれば、ロシアや中国はインターネットを用いた市民の監視や抑圧の技術を輸出するまでになっているという。

あるいは日本大学教授の岩崎正洋氏は、マクロ経済領域への信頼の後退が、政府と他者への不信の増大を招いていると指摘している。それが「上下対立」の根拠の一つだ。

ただ本書ではインターネットへの言及や、世界的なポピュリズムの登場とカウンター・デモクラシーとの関連を論ずる箇所はあるが、かつて「第四権力」といわれたマスメディアへの分析はない。もう論ずるに値しない、ということかもしれないが、ポピュリズムの隆盛は、大所高所から論ずる知識人・マスコミへの不信(権威の喪失)の結果でもあろうと評者は思う。

日本大学教授の岩井奉信氏は米国、フランス、英国、ドイツなどと比べながら日本型議会の論議の衰微を論じているが、中選挙区制の崩壊がもたらした議員を育てる(育つ)難しさが露呈しているのが現代日本だと評者には思える。

ともあれ本書が多面的に問う日本の民主主義論は傾聴に値する。