【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

日本経団連は2018年春闘で月例賃金の3%引き上げという数値目標を示した。好調な企業業績を背景に経営側が積極的なスタンスを見せたことで、賃上げへの期待感が高まっている。

もっとも、それがどこまで日本の平均賃金を押し上げるかについては慎重な見方も少なくない。実際これまでも、人手不足下であるにもかかわらず、賃金上昇のスピードは緩慢だった。低い物価上昇率、高齢者や女性の労働参加、人手を必要としない技術革新、国際競争の激化といった要因が挙げられるが、就職氷河期世代の賃金水準の低迷にも最近注目が集まっている。これは、日本の労働市場を改善する方向性について重要な示唆を与えるものだ。

厚生労働省によると、06年から16年までの10年間で、一般労働者(主に正社員)の所定内給与月額は約2000円上昇した。ところが、40〜44歳に限定すると、約2.5万円、率にして7%減少している。35〜39歳の減少率も約5%と大きく、40歳前後に集中しているので「アラフォークライシス」と呼ばれている。