西川口駅から徒歩5分のSYビル。上から下まで中華料理店が入居する。西川口チャイナタウンのアイコンだ(撮影:高口健也)

勃興するチャイナタウン

「どこでもドアで中国に帰ったみたい。懐かしい!」。そう言うのは筆者の妻だ。中国・天津出身で来日6年。日本の生活を愛する彼女だが、埼玉県・西川口の駅前エリアを歩いてにわかに望郷心がかき立てられたようだ。一帯は近年、新興チャイナタウンとして注目を集めている。

西川口がある川口市は近年、全国で最も中国人が増えた自治体だ。市内の中国人は2012年末~17年6月末で6222人増え、1万8898人に達した。市民の3.2%が中国人だ。これらの中国人は横曽根、芝といった地区に特に集住している。そしてその核を成すのが、JR西川口駅を中心とする半径300メートルに形成されているチャイナタウンだ。

通りには飲食店から商店、娯楽施設まで、中国人が営む中国人向けの店が目立つ。横浜市や神戸市などの中華街は日本人向けの観光色が強いのに対し、「中国人の中国人による中国人のためのチャイナタウン」なのである。筆者がざっと数えたところ中国人向け店舗は30店以上。横浜中華街と違って街並みは中国的ではないが、通りを歩けば自然と中国語の会話が聞こえてくる。

中国人向け店舗の大半は飲食店。多いのが、「麻辣(マーラー)タン」を扱う店だ。野菜や肉、練り物を辛いスープで食べるB級グルメ。「麻辣味(しびれる辛味)は中毒性があります。中国人女性には、はまっている人が多い。うちの店にも毎日来る人がいます」と、ある店のオーナーは言う。

ほかにも一帯の店では、しょうゆで煮しめたアヒルの首「鴨(ヤー)ボー」や、煮込んだ豚の脊髄をすすって食べる「大醤骨(ダージャングー)」といった日本ではまだ珍しい料理が楽しめる。広東系の中華料理に親しんできた日本人の口に合うかは微妙だが、本場の味ではある。夜だけ営業という店が多いので、食べ歩きたいなら夜に訪ねることを勧める。