「野外観察」をしても、その内容が正しく記録されていなければ意味がない。ビジネスパーソンでも、自分の記憶力に自信があるのか、他人の話を聴いていてもメモを取らない人がいるが、こういう記憶は不正確だったり、変容してしまうことがよくある。メモを取る場合には、ポイントになる事項を外してはならない。川喜田二郎氏は観察事項について四つの条件が必要になると指摘するが、これはメモ取りや報告書作成においてもとても重要になる事項だ。川喜田氏の記述を見てみよう。

〈さて、いかにしてものごとを観察するか。この観察方法については、いくつかの基本的な注意が必要である。まず、どんな観察事項も次の四つの条件を備えていなければならない。それは(1)とき、(2)ところ、(3)出所、(4)採集記録者についてである。つまり、観察し記録するにあたって、それはいつ、どこで、どういう出所から、だれが観察し、記録したかを書きとめることである。この四条件をはっきり備えていない観察事項は、科学的な資料として扱ってはならない。これはまったくかんたんな注意ではあるが、野外研究のルールとしてこういうことすらいままではっきりと書いてある本はあまりなかった。以上の四項目のひとつが抜けても、その記録は科学者が扱うべきものではないという注意すら書いてあるものはすくない。〉(川喜田二郎『発想法 改版』中公新書、2017年、36ページ)

観察事項がきちんと記録されているということは、説得力のある表現をするための必要条件である。特に興味深いのは「出所」に関する川喜田氏の認識だ。〈「出所」というなかには、細かくいえばいろいろな場合がある。直接目撃したのか、あるいは測量でどういう計器を使ったのか。また人を介して耳から入れた情報ならば、二十歳ぐらいの娘がいったのか、六十歳ぐらいのおばあさんがいったのか。あるいはそこに通訳が介在していたのか、それとも通訳はいなかったのか、等々がはっきり記録されていなければならない。〉(前掲書37ページ)