過日、ビジネスマンの方々に講演する機会があった。アカデミックなところを容赦なくお話しください、とのご依頼。そこで昨年はじめに刊行した新著のエッセンスを紹介するプランにした。600ページに近い学術書をあらかじめ読んできて、と求めたのだから、ずいぶん気の毒な話ではある。ところが当日は議論もはずんで、充実した時間が過ごせた。

もっとも右のような機会は、望外希有ではある。ビジネスマン向けといえば、政治にせよ経済にせよ、中国や東アジアの現状は目前の課題と直結するので、セミナーや講演会は数多あろう。しかし歴史屋の出番は、ごく少ない。あっても、昔のことをわかってもらうのが関の山、表面を撫(な)でるくらいの話になってしまう。歴史はたしかに、即答が求められる実務・時事からは、最も縁遠い。