具象化する以前の混沌とした事柄を文章化するきっかけをつかむ技法として、川喜田二郎氏が提唱する「一行メモ」は優れている。〈問題の構造がとらえられたならば、それをさらに圧縮的に、短かい一行の文句もしくは一言で表現することである。こうしたときはじめて、どういう問題が追求すべきものかということが、当事者にもはっきりと浮かびあがってくる。もし問題が個人的な問題だとすると、それをはっきり提起するためには、自分の頭の中を探検しなければならない。それゆえ、この手続きを、かりに「内部探検」と呼んでおこう〉(川喜田二郎『発想法 改版』中公新書、2017年、29~30ページ)。ここで川喜田氏が文学的表現をしている「内部探検」とは、作業仮説を組み立てることだ。頭の中で、いくつかの作業仮説を組み立ててみる。それをノートに書き出してみる。この作業によって、作業仮説の問題が見えてくる。一つと思っていた問題が、実は複数の要因からなる複合問題であることが明らかになる場合も多い。

このような作業仮説を検討する作業はチームで行ったほうがいいと川喜田氏は考える。〈じっさいに内部探検をやってみると、極端な場合はこういうことすらある。すなわち、はじめは漠然と、問題がただ一つだと思っていたところが、内部探検の結果、じつはぜんぜんちがう問題が二つ重なっていたことがわかることさえある。われわれは自分の問題だから、自分にはよくわかっているように思いこんでいるのだが、じつは上記のように一度外部に表現し、それをフィードバックしないと信用できないのである。/これが個人的な問題提起ではなく、複数で、たとえば職場の一チームで、共通に問題を取り上げなければならぬ場合だと、問題提起の内部探検をはっきり行なうことは、決定的な重要性を持つのである。そのためにはどうすればよいか。職場の数人が集まって、その問題に「関係のありそうな」ことをなんでもよいから、吐き出さなければならない。つまり数人のメンバーの頭のなかを探検するのである。そして吐き出されたものを組み立ててみる。構造づけてみる。そのときに、「なるほど問題はこうなのだ」ということが、はっきり数人のメンバーに確認される〉(前掲書30~31ページ)。