こうすれば日本の医療費を半減できる (単行本)
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たけひさ・ようぞう●医療法人平成博愛会理事長、社会福祉法人平成記念会理事長、平成リハビリテーション専門学校校長などを務める。専門分野は内科、リハビリテーション科、老年医学、臨床検査。1966年岐阜県立医科大学卒業。徳島大学大学院医学研究科修了。

医師ならではの医療効率化策を明示

評者 慶応義塾大学経済学部教授 土居丈朗

タイトルを見て、逼迫するわが国の財政状況から、必要な医療まで無慈悲に削減する企てを想起するかもしれない。財政学者が書けばそう受け取られても仕方ない。しかし、本書を執筆したのは慢性期医療に30年以上携わり、病院・施設を経営する医師である。

著者は、先進国水準に比べて多すぎる病床(ベッド)と長すぎる入院日数を減らす一方で、不十分なリハビリテーションの体制を強化して元気な高齢者を増やすことで効率化し、2035年に向けて現在の医療費の推計値を半減できる、と訴える。本書には、医師ならではの具体策が明示されており、説得力がある。

わが国は、世界トップクラスの平均寿命だが、寝たきりの高齢者が多く、健康寿命と平均寿命の差が問題視されている。だが、その解消策を病院のあり方と関連付けた議論は不十分だった。著者は、「慢性期病院」で医療に従事した経験とデータから、病気やけがの治療をする「急性期病院」に中途半端に長く入院して寝かせきりとなったり、自立能力を回復させるのが容易でなかったりする患者が多いことを突き止めた。治療を受けるために入院しても、早期にリハビリを受けて生活能力を取り戻し、自宅や施設に復帰できるようにすれば、それだけでも元気な高齢者を増やし、医療費も抑制できる。

患者やその家族にも、長く入院すると病院が受け取る医療費が減るから、追い出されるかのように退院させられる、という認識を持つ人は多い。しかし、長い期間ベッドで安静にしていることがかえって患者のためにならないことがある。著者の「フレイル(虚弱状態)は病院でつくられる」という言葉には重みがある。短い日数で退院しても、適切なリハビリでむしろ患者の自立能力が高まるという認識を、広く国民が共有すべきだろう。

医師や看護師の頭数をそろえただけで、治療体制が貧弱でリハビリ機能もない「なんちゃって急性期病院」の病床を、慢性期の病床に早期転換すれば、年間3兆6500億円削減できるとの試算を示す。

高齢の患者に大量に薬を処方する多剤投与も問題視する。薬は医師が処方するが、薬剤師がそれを漫然と受け入れ注意を促さないのでは役割を果たしたことにならない。多剤投与を改め適切に処方することで、患者の健康を守り医療費を節約できる。

医療費を半減させる本書の策は、日本の医療水準を高め、健康寿命を延ばすことに資するものである。