6000人規模のお笑い芸人・タレントを抱えるエンタメ界の巨人、吉本興業。同社の大崎洋社長に、日本のエンタメビジネスの現状と将来について語ってもらった。

おおさき・ひろし●1953年生。78年関西大卒業、同年吉本興業入社。ダウンタウンのマネジャーなどを務め、2001年取締役東京本部制作営業統括部長。05年専務取締役、06年取締役副社長、09年より現職。(撮影:尾形文繁)

──吉本興業の創業家をモデルにしたNHK連続テレビ小説「わろてんか」が好評です。

メーカーの創業者や偉人ではなく、お笑いの会社を扱ってもらったことに時代の流れを感じる。先日、オリックスの宮内義彦シニア・チェアマンに、コンテンツなども含めたベンチャーファンドを立ち上げる話をしたら、「いいね。そういう時代だよ」と、言っていただいた。コンテンツやエンターテインメントが、ただの娯楽以上の役目を果たせる時代になった。

──沖縄でのエンタメ振興に熱心ですが、その狙いは。

当社が運営する沖縄国際映画祭は18年に10回目を迎える。

戦略があって映画祭を始めたわけではないので、どうしてそこまでやるのですか、と聞かれても、「何となくやってます」としか答えられないな(笑)。ただ沖縄の人や子どものために、努力していきたい。

沖縄の人とこんなお祭りを毎年一緒にできるのなら、エンタメ産業も作り出せるのでは、と思い専門学校も立ち上げることにした。18年4月には、ダンサーなどのパフォーマーやアニメーター、漫画家、プロデューサーといったクリエーターを養成する専門学校を沖縄に開校する予定だ。短期で映画祭、中期で学校と、長期的にエンタメ産業の創出が沖縄でできたらと思っている。

──ダンススクールにも力を入れています。

トニー賞3回受賞のヒントン・バトル氏を校長に据え、世界的なエンターテイナーを育成しようとしている。

日本の人口が減っていく中で、マーケットを広げていかなければならない。日本のポップカルチャーを外に出す方法もあるが、海外の人と組むことも考えられる。ヒントン氏と一緒にやるのは後者のパターン。欧米人より身体的に見劣りしていても、日本人らしいダンスのあり方、ショーのあり方があるはずだ。

やがては日本の若い子がブロードウェーやハリウッドで活躍できるよう育成を進めていきたい。ブロードウェーでの、日本オリジナルミュージカルをロングランで公演することが中期的な目標だ。

和製“ネトフリ”を日本発で作れないか

──ネットコンテンツが主流になる中、日本のエンタメ界がするべきことは何でしょうか。

世界のマーケットからおカネをどう適正に受け取るかに尽きる。たとえば日本のアニメが中国で評判になっていても、おカネが適正に配分されないため、末端のアニメーターにきちんとした給料を払えない状況になっている。

そのためには、米国のネットフリックスやアマゾンのような、世界に通用する国産のコンテンツプラットフォームを持つ必要がある。そうしないと下請けで仕事をする存在にしかなれない。吉本興業だけの力ではできないが、日本の企業や国が組んで作るべきだと思う。

日本はバラエティ番組を作る能力があるし、漫画やアニメ、ゲーム、伝統工芸などで、海外で勝負できる実力を持っている。欧米は、世界でおカネを回収するシステムを持っているが、日本はそれがないので国内限りで終わってしまっている。次のステップに進まないと、いいクリエーター、いい役者も育ちにくくなるし、夢も与えられなくなる。

──タレントにコンプライアンスを求める風潮が広がっています。対策は?

コンプライアンスの冊子を作って、毎年タレント全員に説明するなどしている。そうした取り組みを地道にやるしかない。一方で、やはり才能ある人たちには自由に表現してもらいたいのが理想なので、そこをどれだけ守れるか。組織としてどうバランスを取るかがあり、マネジメントは難しくなっている。

マネジメントという点では、国際的な視点を持つ必要がある。ネットによる配信が広がる中、日本独特のやり方ではもう太刀打ちできないだろう。

──18年はどんな年にしたいですか。

笑っていれば、いいことがある。毎日明るく過ごせる年にできたらいいな(笑)。

(聞き手・本誌:宇都宮 徹)

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