日本は永遠の謎の国だ、経済学的には。『ビジネスウィーク』誌に言われてしまった。

失業率は23年来の最低水準。求人倍数は43年ぶりの最高水準。ところが、2017年夏、ボーナスを含めた総給与は0.3%ダウンした。日本では、需給法則も、シンプルな算数も働かない──。

なぜ、こんなことになるのか。気鋭の学者たちの論文集『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(玄田有史編)には、「下方硬直がもたらす上方硬直」という仮説が登場する。労働者は賃金が下がることに抵抗する(下方硬直性)。下げられないのなら、経営者は好況期にも賃金を上げない(上方硬直性)という説だ。経営者の思いはそうかもしれない。

しかし、労働者は下がらないだけで満足なのだろうか。

1974年、半日以上のストライキを伴う争議は5197件起こった。15年はわずか39件。労働組合の組織率は終戦直後の56%から17%に下がっている。

何も「騒動を起こせ」というのではない。が、すべからく商品の価格は売り手と買い手の力関係で決まるべき。ところが、労働力という商品の売り手は、一途に自分の交渉力をそいできたのである。

日本に限った話ではない。

米国の労組の組織率は83年の20%から11%に半減した。とりわけ民間は6.4%にダウン。結果、何が起こったか。50年前、25歳の賃金の中央値は3.3万ドルだった。11年は2.5万ドルに届かない(インフレ調整後)。『ビジネスウィーク』誌はよそのことを言えた義理ではないのだ。

とはいえ、日米ミレニアル世代にとって、労組や団体交渉権など前世紀の遺物なのだろう。まして、日本の首相は毎年、3%賃上げを経営者に要求してくれている。首相にお任せで何が悪い──。