内館牧子氏の小説、『終わった人』(講談社)は中高年の会社員を中心に支持され、売り上げ15万部のベストセラーとなった。映画化が決まり、2018年中の公開が予定されている。大手銀行での出世争いに敗れ定年を迎えた男性の心情を緻密に描いた作者に、定年後を見据えた会社員の心構えを聞いた。

うちだて・まきこ●1948年生まれ。会社勤務を経て脚本家に。代表作にNHK連続テレビ小説「ひらり」、大河ドラマ「毛利元就」など。『小説現代』(講談社)で78歳女性が主人公の小説、「すぐ死ぬんだから」を連載中。(撮影:今井康一)

──定年後の男性の生き方を今回テーマに選んだのは?

私は新卒で三菱重工業に就職し、配属された横浜造船所は当時、毎年50〜60人が定年で辞めていきました。主に社内報の作成を担当し、彼らにインタビューするのも仕事です。大半の人が、「定年後は妻と温泉に行きたい」「絵を描きたい」などと話しており、20代だった私は、楽しそうでうらやましいなあと思っていました。

ですが自分が50代になると「あれはどうも違うんじゃないか」と考えるようになった。50代にもなると妻は夫と温泉に行っても何も楽しくはない。忙しいさなかに時間を捻出して行うから趣味は面白いのであって、毎日が休みの定年後に始めても楽しくない。

──小説は「定年って生前葬だな」の一文で始まります。