たけだ・しんいちろう●1959年生まれ。成蹊大学大学院博士後期課程修了(法学博士)。徳島大学助教授、愛知大学助教授を経て現職。(撮影:谷川真紀子)

住民投票の争点は、かつては原子力発電所や産業廃棄物処理施設といった“迷惑施設”の建設の是非だった。だが近年は、新庁舎や文化施設など、住民の利益になるはずの施設の是非が問われている。自然環境や自治体財政を考慮し、本当に必要か考え直す機運が高まっている。こうした意識が後退するとは考えづらく、今後も住民投票は各地で提起されるだろう。

投票結果に対して行政は「尊重する」義務があるだけで、法的な拘束力はない。それでも目に見える形で示された民意の存在は大きく、ほとんどの自治体は住民投票の結果を政策に反映させている。

住民投票には影響力がある反面、実施にまでたどり着かないケースも多い。市町村合併など特殊なケースを除けば、行政の政策を問う住民投票条例案は、これまで9割以上が議会で否決されている。東京都小平市の住民投票のように、投票率が一定水準以上にならなければ開票しないという要件を付す自治体もある。

議員の多くは「選挙で民意は示されており、あらためて住民投票を行う必要はない」と考えているようだが、これは認識不足だ。確かに選挙は重要だが、当選した議員が民意に沿った行動を取るとは限らない。そのようなときに政策と民意のズレを調整するのが住民投票の役割だ。

同様に、投票をするのは反対派だけという意見も住民投票の本質をとらえていない。賛否を超えて議論したうえで1票を託すのが住民投票であり、中立的な制度のはずだ。