34年にわたる長い戦いだった──。1996年8月、新潟県西蒲原郡巻町(現新潟市西蒲区巻)で日本初の住民投票が行われた。原子力発電所建設の是非を問い、投票率は88%。61%が反対票を投じた。そして2003年12月、東北電力は建設計画の白紙撤回を余儀なくされた。

発端は1969年の地元紙報道。住民の意思とは裏腹に進む巻町原発建設計画に有志が立ち上がる。その1人が、後に町長として国や東北電力と対峙する笹口孝明氏だった。「普通の町(原発のない町)でありたかった」。

原発反対を主導した元巻町長の笹口孝明氏

「命にかかわることは皆で決めよう」と住民投票の実施を決めたものの、町は認めない。ならばと、町民たち自ら投票を行い、反対多数の結果を町に突き付けた。拘束力はないが、これが原動力となり、後の住民投票条例可決や町長辞職へとつながった。96年1月に笹口氏が町長に就くと、住民投票実施が正式に決まった。有志らの精力的な広報で住民による理解も深まり、原発の説明に来た官僚を「そんなことくらい知っている」と追い返すほどだった。