10回にわたって渡部昇一氏の『知的人生のための考え方』をテキストにして表現法について、さまざまな側面から考察を加えてきた。その内容を筆者の言葉で7点にまとめ直してみる。

第一は、大学時代の教養が重要になるということだ。

教養は特定分野に偏ってはならず、人文・社会科学、自然科学についてバランスの取れた知識を付けなくてはならない。さらに欧米由来の近代的な学知だけでなく、日本と中国の古典に関する教養も重要になる。

もっとも本誌の読者であれば、日常的に仕事に追われ、また仕事に直接関係する能力を向上させるための勉強で時間がいっぱいだ。それだから、池上彰氏が出しているような社会人向けの教養書を読んで、知識の欠損を埋めていくというのが現実的アプローチと思う。

大学生や大学院生の子どもや孫を持つ読者は、学生時代に広範な教養を付ける必要性をぜひ伝えてほしい。2020年度に大学入試制度が変わるとともに大学教育でも文理融合が進み、教養が重視されるようになるので、近未来の大学生、大学院生は現在よりも良好な環境で勉強することになる。

第二は、書く訓練を徹底して行うことだ。

これについては、表現のプロから学ぶのがいい。カルチャースクールの文書作成コースは、プロの作家や編集者が書く技法を伝授してくれるので、受講料以上の成果を得ることができる。

本格的に書く力を付けるために、体制を整えている大学もある。沖縄県名護市の公立名桜大学は、琉球朝日放送からプロの記者をスカウトして「ライティングセンター」で学生の指導に当たらせている。その成果が就職に着実に表れており、16年度はこの大学から初めて東京都庁上級職の合格者を出した。大学には職業作家が教授として勤務している例も多いので、こういう人材を書き方の指導に当たらせると、学生の書く力が伸びる。