日本を代表する作家・経済評論家で、約20年前に『平成三十年』という未来小説を発表している。歴史にも造詣の深い慧眼の士が見た現実の平成30年は。

さかいや・たいち●1960年通商産業省(現経済産業省)入省。日本万国博覧会を企画。78年退官、作家として予測小説の分野を開拓。98〜2000年経済企画庁長官。(撮影:今井康一)

私が『平成三十年』で描いたのは、「何もしなかった日本」の未来だ。激変する世界に立ち遅れつつあった日本が、抜本的な改革を先送りしたらどうなるのか、2017〜18年の日本を舞台に警鐘を鳴らす作品だった。

実際に、この30年間余りは、ほとんど何の改革もなされないまま終わった。小説は大きな意味で当たってしまった。

ただ、デフレの到来は予期できなかった。本書は資源危機や円安などによってインフレが起きるとの発想で書いている。産油国の生産競争とシェール革命で石油価格が思ったよりも上がらなかったことが一因だが、日本が低欲社会になったことはもっと大きい。

物欲がなく、たまったカネはせっせと貯金する。新しいことに挑戦したがらない。出世意欲もない。結婚もしない、子供も産まない。「欲ない、夢ない、やる気ない」。そうして日本全体で消費や投資が抑制され、低成長、低欲社会ができ上がったというのが平成の実情だ。他方で昭和の日本人は、消費にも投資にも貪欲だった。「何かしてやろう、何かをせねば」という機運があった。ところが平成は「何もしないほうが得」という時代になった。

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