労働者の取り分を表す労働分配率が低くなっているという問題がある。労働分配率は、1977年には76.1%。リーマンショック前の好景気だった2007年の65.8%に比べ、15年は66.1%である。最近はやや戻り歩調とはいえ、40年前からは10%ポイントの低下である。今日は、この問題を取り上げてみたい。

労働分配率は、景気のよい局面では下がるが、景気の悪い局面では上がる傾向にある。それは、計算式を見るとわかるだろう。労働分配率=付加価値に占める人件費の割合から見ると、収益とは逆の関係になっている。最近の世界経済は絶好調であり、同時好況の真っただ中にある。その意味では、下がってしかるべきともいえるのだが、それにしても、下がりすぎではないかと思う。

これには、女性や再雇用の高齢者など安い労働力を使ってきたということも関係している面はあるだろう。しかしそれ以外に、もっと大きな理由がある。少々古い統計になるが、15年までの2年間で、年収1億円以上の会社役員数は、1.4倍になり、ワーキングプアは49万人増えた。株価は、第2次安倍晋三政権の発足以来上昇を開始し、折からの世界株高もあり日経平均株価は2万円台に達している。ただ株高は資産家には歓迎されたが、ワーキングプア層には何の恩恵ももたらさなかった。

考えてみれば、給料はわずかながら上昇し、物価はデフレ基調である。当然、消費マインドは前向きになり、消費も活発になるはずであろう。しかしそうはならなかった。これにはいろいろな説明が行われた。「将来が不安だから節約しているのだろう」、「貯金もできなかったので、まずは将来に備えて貯金をしているのだろう」……。これらはどれも一理あるのだが、正確に物事の本質を当てているとはいえない。