【今週の眼】三品和広 神戸大学大学院教授
みしな・かずひろ●1959年生まれ、愛知県出身。一橋大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。米ハーバード大学文理大学院博士課程修了。同大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学助教授などを経て現職。著書は『戦略不全の論理』など多数。(撮影:梅谷秀司)

このところ品質に絡む企業不祥事が続発している。現場力の低下を懸念する向きもあるが、私には因果混同に起因する戦略不全の帰結と映る事例がほとんどである。

問題とすべきは「規模」と「優位」の間の因果関係である。一見したところ、「規模」に勝る企業が無類の強さを発揮する業界は枚挙にいとまがない。自動車しかり、スマートフォンしかり、コンビニしかりである。「規模」を原因として、結果が「優位」になる。そう考えたくなるのも無理はない。

ところが、歴史を精査してみると情景が一変する。米国に初めてトヨタ自動車の「クラウン」が輸出された1957年時点で売上高を比較してみると、トヨタは400億円強で、米GMは4兆円であった。GMのわずか100分の1という「規模」から出発したのに、トヨタ生産方式という「優位」を築くことで、トヨタはGMを上回る「規模」を手に入れたのである。

同様に、米アップルはハードウエアとオペレーティングシステムの統合を「優位」としてソニーを追い抜いた。セブン-イレブン・ジャパンも共同配送センターを核としたロジスティクスを「優位」としてローソンを寄せ付けない。

要するに「優位」が「規模」を支えるという理解こそ正当なのである。それなのに原因と結果を取り違えて「規模」が「優位」を生むと思い込む愚が、私の言う因果混同にほかならない。これに経営者が引っ掛かると、「優位」を手に入れるために「規模」を追う施策に走り出し、悲劇に次ぐ悲劇を引き起こしてしまう。