社運を懸けた「スイッチ」が好調な滑り出しを見せ、業績の低迷から脱した任天堂。この勢いを加速し、会社を再び成長軌道に乗せることはできるのか──。君島達己社長に聞く。

きみしま・たつみ●1950年生まれ。73年に三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、2002年に任天堂入社。米国法人会長や経営統括本部長を経て15年から現職。(撮影:梅谷秀司)

──スイッチは、任天堂の据え置きゲーム機ビジネスが危ぶまれる中で発売されました。プレッシャーも大きかったのでは?

重圧はあったが、それは今回に限った話ではない。(3代目社長を務め中興の祖だった)山内溥前相談役からよく、「この業界にあるのは天国と地獄だけ。中間はない」と教えられてきた。新しいゲーム機を発売する時はいつも、本当に売れるのだろうかと心配だ。残念ながら、前機種の「Wii U」が世間にあまり受け入れられなかったのは事実で、次のスイッチではなんとか天国に行きたいという思いが強かった(笑)。

──発売から半年以上を経ても品薄が続く人気ぶりです。

ここまでは期待した以上の売れ行きだ。次は最需要期の年末商戦が大きな勝負どころだが、だんだんと天国に向かっているという実感が湧いている。

今回よかったのは、任天堂が長年手掛けてきた携帯型ゲーム機の知見を生かせたこと。実機を見るまでは簡単に持ち運びできるのか不安だったが、触った瞬間「これだったら大丈夫」と納得できた。また、本体と同時発売したソフトの出来もよかった。特に『ゼルダの伝説』は評判が高く、コアなゲームファンにも早い段階でスイッチの魅力を理解してもらえた。

あとは、どこまで年齢層を広げていけるか。任天堂は年齢や性別、国籍に関係なく、できるだけ多くの人に遊んでもらえることを目指してきた。スイッチでもその方針は同じ。われわれの強みであるソフト開発部隊を生かし、スイッチの機能を生かした新しい遊び方を次々に提案していきたい。まだ隠し球はあるので、楽しみにしてほしい。

──1億台を販売した初代「Wii」に並ぶ自信はありますか。

スイッチにはWiiとは違った可能性がある。据え置きゲーム機でありながら気軽に持ち運べるので、めいめいが遊べるよう1家庭で2台買ったといった事例も出始めている。携帯ゲーム機としては値段が高いこともあって、そうした需要は事前に想定していなかった。一家に複数台となれば、Wiiで記録した販売台数も期待できるかもしれない。

──スイッチが携帯機として普及すれば、自社の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」との食い合いが懸念されます。

スイッチが1人1台にまで普及していけば、従来の携帯ゲーム機ビジネスのやり方にも影響が出てくるかもしれない。ただ、足元の3DSの販売状況を見ると、数字は落ちていない。携帯機を通して初めてゲームに触れるお子さんは多く、携帯ゲーム機ビジネスにも可能性はまだまだある。