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『歴史としての大衆消費社会』 『米中露パワーシフトと日本』ほか

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歴史としての大衆消費社会:高度成長とは何だったのか? (総合研究 現代日本経済分析 第Ⅱ期)
歴史としての大衆消費社会:高度成長とは何だったのか? (総合研究 現代日本経済分析 第2期)(慶應義塾大学出版会/384ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
てらにし・じゅうろう●一橋大学名誉教授、同大学経済研究所非常勤研究員。1942年生まれ。同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士(一橋大学)。同大学助教授、教授を経て、2004年から名誉教授。米イェール大学客員教授、日本大学大学院教授なども歴任。

戦後史を根本から見直す挑戦の書

評者 北海道大学経済学研究院教授 橋本 努

戦後の日本人にとって「高度経済成長」は、世界に誇るべき歴史的偉業のように思われた。ところがバブル崩壊以降の経済的停滞は、あの頃の日本の誇りを問い直すのに十分長い期間になったであろう。著者によれば、高度成長期の日本が誇れるものはあまりない。築かれた大量生産・大量消費のシステムは、端的に言って、日本の伝統的な消費文化にそぐわなかったという。

日本の高度経済成長は、分厚い中間層に支えられた平等な経済システムを確立した点で、国外からも高く評価される。だが本書の見方は厳しい。耐久消費財の画一的な生産に支えられた大衆消費社会は、敗戦と占領という衝撃のもとで、日本人がさしあたってアメリカによる文化支配への適応を受け入れた結果にすぎない。これに対して1980年代以降の消費社会は、商品の差異化を通じて、伝統的な日本型消費経済へ回帰する萌芽を含むものだという。

著者によれば、消費社会には二つのタイプがある。一つは生産者主導の大量生産・大量消費で、これは西洋型。もう一つは生産者が消費者の嗜好を踏まえる少量生産・少量消費で、これは日本型。あまりにも大ざっぱな分類だが、著者はこの区別に基づいて、日本では高度経済成長の終焉とともに、伝統に根差した消費文化の時代が再来したと捉える。

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