たかい・ひろゆき●神戸大学経営学部卒業、住友商事入社。非鉄金属本部で17年間、うち7年間は英国ロンドンで貴金属や、銅・アルミなどベースメタルの取引を担当。その後、金融事業本部長やエネルギー本部長を歴任、2013年6月から現職。国内外の商品取引業界にも関与している。(撮影:梅谷秀司)

「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し幸福感の中で消えていく」とは米国の著名な投資家ジョン・テンプルトンの言葉だ。今の国際商品市況はまさにこれに当てはまる。

商品を代表する原油で見ると、WTI先物価格で2016年初めに高値の4分の1の1バレル当たり26ドルまで下落したが、その後は値頃感からくる需要増や産油国による協調減産もあって値を戻し、足元で55ドルと安値の2倍超にまで戻している。一時は20ドル割れを予測する専門家が出るなど、まさに悲観のどん底で生まれた相場は「懐疑」の中で上下変動を繰り返しながらも着実に回復している。

ここで注目しておきたいのが「脱炭素」というグローバルな潮流だ。今夏以降、中国やインドの環境問題、パリ協定などにより、長期トレンドでCO2の排出量が多い化石燃料からクリーンエネルギーへの流れが鮮明になる。

中でも一番の注目が自動車のEV(電気自動車)化の動きだ。英国、オランダなど欧州各国、インドなどアジア諸国が次々とガソリン車・ディーゼル車の将来的な販売停止を発表している。中国も25年までに新車販売におけるEVの割合を2割にする計画という。

その恩恵を受けたのがEV用のバッテリーに使用するコバルト、ニッケル、銅などの非鉄金属相場だ。コバルトは年初から2倍に、ニッケルや銅も2割以上も上昇した。また自動車の軽量化という観点からアルミニウムの価格も上がっている。