10月27日、ビックカメラ池袋本店では、平日の朝にもかかわらず、開店前から300人以上の行列ができた。お目当ては、品薄状態が続いている任天堂の新型ゲーム機「Switch(スイッチ)」(税抜き2万9980円)。この日は同機の有力ソフト『スーパーマリオ オデッセイ』の発売日で、それに合わせて入荷されるスイッチ本体を買おうと大勢の客が押しかけたのだ。

開店すると、数百個あったはずの本体はすぐ完売。8時半から並んでいた50代の男性は、「親戚の子どもがスイッチで遊びたがっている。その喜ぶ顔が見たくて。やっと買えてよかった」。別の40代男性は自分のために購入。「マリオも面白そうだけど、いちばん楽しみにしているソフトは『ゼルダの伝説』。評判がすごく高いので、ソフトだけ先に買ってあるんです」とうれしそうに話した。

今年3月に発売されたスイッチが飛ぶように売れている。すでに累計の世界販売台数は700万台を突破し(9月末時点で763万台)、店頭では入荷即完売が続く。こうした人気を受けて任天堂は増産態勢を敷き、10月に2017年度の販売目標を従来比4割増の1400万台へ上方修正。同社の据え置き機で最も売れた初代「Wii」を彷彿させる勢いだ。

スイッチが牽引する形で業績も急回復。会社予想によれば、17年度(18年3月期)の業績は売上高が前年度比28%増の9600億円、営業利益に至っては1200億円と84%増える見通しだ。営業益の1000億円突破は7年ぶりのことである。

任天堂にとって、今回のスイッチは絶対に失敗が許されないゲーム機である。先代機種の「Wii U」が、事業として歴史的な大失敗に終わったからだ。

11年前に世に送り出した初代Wiiは、1億台を超える驚異的な販売台数を記録した。リモコンを片手で振るなど簡単な操作で遊べるように設計されたWiiはゲームのハードルを下げ、これまで無縁だった層の取り込みにも成功。幼児からお年寄りまで誰もが楽しめるゲーム機として普及し、世界的な大ブームにもなった。

しかし、その後継機として12年に発売したWii Uは1356万台しか売れなかった。ハードが普及しなかったため利益の源泉となるソフトも当然売れず、業績は急速に悪化。11年度から3年連続で300億円を超える営業赤字に沈むなど、深刻な経営不振に陥った。

Wii Uの次も失敗に終わってしまったら、任天堂の歴史ある据え置き機ビジネスの存続自体が危うくなる。その命運を背負う形で開発されたのが今回のスイッチだった。