行動経済学は、人間の非合理的な行動を科学的に説明しようとする学問だ。このアプローチにおいて重要になるのは、「人はどう行動しているのか」「どんな要素によって行動を変えるのか」という人間の行動実態についての正確な分析である。近年、経済学の分野でも実験を行うことで、行動を精緻に解明できるようになってきた。

経済学は実験を行うことが難しい学問だと長く考えられてきた。だが近年、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial、RCT)と呼ばれる手法を使い、フィールド(実際の経済環境)における実験が行われるようになっている。

RCTは、個人や家庭、企業といった実験対象となる集団を複数のグループに分け、ある介入を行った場合の影響をグループ間で比較する手法だ。ポイントはランダムにグループ分けすること。介入以外はグループ間の差がない状況を整え、結果からバイアス(偏り)を科学的に排除し、因果関係を明らかにするのだ。

たとえば2008年の米大統領選でオバマ陣営は、RCTを使ってウェブサイトのデザインを決めた。画像やクリックボタンの文言が異なる24通りのサイトを閲覧者31万人にランダムに表示し、それぞれのサイトを見たグループごとにメールアドレス登録率を測定。最も登録率が高いサイトのデザインを、選挙運動本番で採用した。