行動経済学は、それまでの標準的経済学が前提とする「合理的経済人」を否定し、理論の修正を迫ってきた。現在に至るまでの大きな流れを表したのが記事下の図だ。

近代経済学は、アダム・スミスの主著『国富論』で幕を開けた。これ以後の学説を古典派経済学と呼ぶ。産業革命期の前後に、生産(分業)や市場取引を中心に考察した。スミスは「人は利己心を持ち、自分の利益を最大化するように行動する」と指摘。そこには合理的に行動するという前提も含まれる。合理的経済人は古典派の誕生当初から、理論の根幹にあったのだ。

また、供給が需要を上回れば価格は低下し、需要が供給を上回れば価格は上がるメカニズムを説き、これにより市場は安定的に均衡するとした。同時にスミスは、人は他者の感情を想像する「同感」(シンパシー)を持つとも指摘。「自分が同じことをされたら嫌だ」と感じることで道徳的ルールが形成されるから、悪事を働いてまで自己利益を追求する行為は抑制されるとした。

これらの要素が自由放任主義につながる。利己心と同感だけで市場は自然と均衡するから、経済への政府の介入は不要という主義だ。こうした自由放任を受け継ぎ、理論をより精緻化させたのが次の新古典派経済学だ。