小谷義孝様 編集部気付のお手紙確かに拝受いたしました。文中のアメリカ映画『ハーヴェイ』にちなんだハーヴェイクラブの封筒をお使いくださるお心遣いに、ほおが緩んで戻りません。

あの映画は大好きで、おそらく誰もがハーヴェイ(幻想の大ウサギ、善意の象徴)を連れにしているにもかかわらず、気づかないのでしょう。私はヘンリー・コスター監督の作品が大好きで、アイルランドの妖精ものではセシル・ケラウェイの演じた妖精が主人公の『幸福の森』も忘れられません。大きな樹の根の底に、たくさんの金貨が入ったつぼを隠している彼に会って、「俺にも少し貸してくれよ」とねだる光景を何度空想したかわかりません。

お手紙のように、地球上の誰もがハーヴェイを相棒にしてくれれば、ギスギスした刺々(とげとげ)しい争いもかなり鎮まることでしょう。ハーヴェイは自分を必要とする人間が招くまで、じっと待ち続ける根気強さを持っています。「私が見えない人間なんて、こっちが相手にしないよ」などと澄まし込む意地の悪いウサギではありません。

でも、あの映画でのジェームズ・スチュアートは適役でしたね。フランク・キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』の彼もそうでしたが、底抜けの善意は生得のものでしょうか。ハーヴェイは善意の象徴で空想上の存在ですが、映画を見ているとジェームズ・スチュアートのほうが、つまり人間のほうがハーヴェイを超える善意の持ち主に見えてきます。

たくさんの俳句もありがとうございます。それもご自作よりも他の方の作られた句をご紹介くださる奥ゆかしさに頭が下がります。でも私は小谷さんの、

「いい事を思いついたぞ秋の空」がいちばん胸に響きました。