夏の暑い盛り、私たちは天竜川に程近い山の尾根にいた。そこには、道路標識どころか道もない。手にあるのは、国土地理院が発行した2万5000分の1の地図とコンパスだけだ。

私は、定期的に実施している自己啓発セミナーの一環として、地図判読実習を行っていた。受講者のほとんどは経営者で、彼らのモチベーションは極めて高い。いや、貪欲というほうがふさわしいかもしれない。 

それは、単に自分自身の能力アップだけを目的としているのではないからだ。彼らが強く意識しているのは、講習を通して得た知識と技術をどう会社組織に反映させるか、ビジネスへいかに生かしていくか、社員へはどうやって落とし込めばいいか、ということなのである。だから、講義の理解が深くて早いし、実習での習得も早い。

自己啓発セミナーで行う地図判読実習の概要はこうだ。計画されたルートを進んだ場合、どのように地形が変化していくか。それを地図上の等高線などの情報から事前予想しておき、現地で予想どおりに地形が変化していくかを確認しながら進んでいく。そうすれば、つねに自分が地図上のどこにいるのかがわかるので、まるでカーナビゲーションシステムの画面を見ているかのように進める。

私が、経営者レベルのセミナーで地図判読実習を行っているのは、その内容が企業経営者の仕事に必要なものとかなり重なっていると思うからである。

事前収集した情報を分析し、それに基づいて未来予想図を描き、そこまでのルートを計画する。ときには計画を強引に断行し、またあるときには計画を大胆に変更してチームをゴールに導く。