「これから試食の測定を始めます。1分間自由に食べていただき、その間の脳波を測定します」。そう言われた女性の頭には装置が取り付けられている。供された若鶏のグリルを食べている間、脳波が測定される。すると興味度、好き度、ストレス度などが一目瞭然となる。

持ち運び可能な測定装置は、料理を食べたときの、興味度や好き度などの値がわかる(撮影:風間仁一郎)

ここはレストランチェーン「サイゼリヤ」東京本部に併設のテストキッチン。サイゼリヤは今、提供するメニューのさらなる向上へ本気で脳波の分析を始めている。

分析を担う研究開発部門のトップは小川豊・執行役員研究開発部長。前職で飲料メーカーのマーケティング・商品開発の仕事に従事していたとき、「アンケート調査などをいくらやってもお客様の本音はわからない」と感じていた。サイゼリヤの研究開発職に就くと、「お客様の心理や感性を研究したほうがレストランビジネスに役立つのではないか」と思い立つ。そして「全国の大学の研究内容をくまなく調べ、行き着いたのが脳波アプローチだった」(小川部長)。

味覚と脳波の関連を研究し、味を数値化することで、「まずい」メニューの提供を避けようというのが狙いだ。目指すのは、特徴が目立ちすぎず、繰り返し食べられる味。堀埜一成社長は「今後は、会長(創業者である正垣泰彦氏)の脳波を徹底的に調べようと考えている。会長はとても味に敏感だ。会長が『まずい』『嫌』というときの脳波を調べ、メニュー作りの参考にしたい」と語る。

サイゼリヤ千葉工場では、ヘルメット型の測定装置による分析も行われている。電磁波を遮断した実験室で、試食時の脳波の変化を測定する。

千葉工場内にある脳波測定室では、ヘルメット型の装置で測定(撮影:風間仁一郎)

たとえば市販されている他社のソース、サイゼリヤの現行のソース、新たに開発したソース、の三つを順番に試食。ストレス、喜び、リラックスといった要素を計測・分析する。そして新開発のソースがベストの反応になっていることを確認する、といった具合だ。

東京本部でも活用している「感性アナライザ」は、持ち運びもできるので、商品の味のみならず、サービスや店舗環境の調査も行える。たとえば、店の内装の変化や、いすの座り心地など。効果的な店舗看板の出し方の検証にも生かしている。