「曾祖父の時代には西宮市庁舎と市立図書館を建設するために私財を寄付した」

そう語るのは日本酒メーカー、辰馬(たつうま)本家酒造の辰馬健仁社長だ。ちなみに金額は30万円。当時の市税収入1年分に相当する。

西宮市から神戸市東部にまたがる湾岸沿いの地域は灘五郷と呼ばれる日本有数の酒所で、20以上の日本酒メーカーがある。西宮エリアで存在感を示してきたのが、「白鹿」ブランドで知られる辰馬本家酒造だ。創業は1662年。かつては海運や保険などにも進出し、財閥を形成した。

阪神西宮駅から15分ほど歩くと見えてくる辰馬本家酒造の工場(上)では「白鹿」(左下)を製造。「菊正宗」とはいいライバル関係だ

5代目と7代目の市長が辰馬家出身だったこともあり、市政とのかかわりが深い。冒頭のような寄付に加え、市民が集える宴会場や迎賓館の役割を担う施設としてホテルを運営していた(2014年に売却)。地元ニーズに応えて作った13面のコートを備えるテニスクラブを運営しているほか、直近では待機児童を減らすために保育園を設立した。