【今週の眼】佐藤主光 一橋大学教授
さとう・もとひろ●1992年一橋大学経済学部卒業、98年加クィーンズ大学博士号(経済学)取得。2009年から現職。専門は財政学。政府税制調査会委員なども務める。著書に『地方税改革の経済学』『地方財政論入門』、共著に『震災復興 地震災害に強い社会・経済の構築』など。(撮影:梅谷秀司)

総選挙の結果いかんによらず確かなのは、2020年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化させるという財政健全化の目標が先延ばしになることだ。いわば目標というゴールポストが動いた格好になった。

消費増税を凍結するにせよ、教育の無償化を進めるにせよ、財政収支を悪化させることに違いはない。財政再建自体が放棄されたわけではないが、その進め方は再考を迫られるだろう。

この現状をあえて前向きにとらえるならば、財政再建の意義について再考する機会とすることだ。消費増税をめぐるこれまでの議論には同床異夢の感があった。増税と併せて医療提供体制や診療報酬を見直し、社会保障制度の構造改革を行うよう求める意見がある一方、そうした改革を避けて自らの既得権益を守るために増税を支持する声もある。

全世代型の社会保障への転換にしても、高齢者への偏重を改めるなら制度の構造改革にかなうが、育児世帯などへの支援を加えるだけなら制度の膨張にすぎない。そもそも、社会保障と税の一体改革は消費増税にとどまらず、社会保障給付の重点化・効率化を志向していたはずだ。大学教育の無償化にしても、授業料の減少分を国が補助金で埋め合わせるだけなら、大学の救済措置でしかない。

他方、大学の再編成や教育水準の向上を促すよう補助金配分を決めるならば、大学教育の構造改革につながるだろう。改革の目的と手段は区別すべきで、消費増税も教育の無償化も手段の一つであって、それ自体が目的ではない。